お金と時間をかけても観戦したいと思う高校生の試合!



  11月4日金曜日のトレーニング終了後、学校行事のある選手と練習試合が決まっていた選手以外の34人を乗せて滋賀県に向かった。 6号の通信でお伝えした滋賀県の国体選手のMF・FW6人(後半スタメン)は野洲高校の選手だった。当初は「ぜひ自分に行かせ てほしい。」と訴えた若い中村コーチだけが行ってビデオを撮って来る予定だったが、仲村コーチと相談して「良いものはできるだ け多くの選手に見せよう」ということになった。費用を幾らに設定するか話し合い、高速代・ガソリン代・3食を合わせると 3,500円はかかる計算だったが家庭の負担を考えると2,500円がマックスだろうということで決定し、足りない分はチーム 負担とした。希望者のみ東名高速の静岡県内のサービスエリアでシャワーを浴びさせる計画を立て出発。私だけしか野洲のサッカー を知らないこともあり「勝負のかかった試合だけど良い試合になってほしい。」と願いながらの運転だった。 「岩谷さん千葉の渡辺です。ご無沙汰しています。滋賀県の大会予定を教えて下さい。若手に勉強させるために野洲の試合を見せ たいので。」野洲の選手たちの多くはセゾンというクラブチームの選手だということは分かっていた。「ほんまに来るの?試合だ けを見に千葉から?信じられん。勝負がかかった試合だから良いゲームになるか分からんよ。」10月末の電話での会話。初めて 岩谷さん率いるセゾンのサッカーを目の当たりにしたのは現高校3年生が中学1年生の時、群馬で開催された図南カップだった。 ドリブルと個人技術にインパクトがあり、やんちゃな選手の集団という印象だった。当時は今以上にかけ出しで、自分たちの色も 何もないくせに、全国にどのようなこだわりのクラブチームがあるとも知らず、滋賀県のチームを相手にヴィヴァイオはスピード と戦術で勝って少し良い気持ちになっていたように記憶している。その後全国各地の大会で岩谷さんと会うことになる。「こんな 所まで来るんかい。」と懇親会で言われたのは山口県で行われるブルーローズカップだった。岩谷さんはぶっきらぼうで、敵が 多いのだろうというのが第1印象だ。今夏に図南が開催したJのチームを多く呼んでの大会の監督会議の挨拶でも、大会中大 敗しているチームを率いているにもかかわらず「俺の注射は10年後に効くようにしてあるから。」と言ってのけた。「数年したら スタッフが変わっているようなJのチームには岩谷さんの言っている意味が分からないだろうなぁー。」と思いながら聞いていた。 今、勝つためにスピードや戦術を重視しすぎることなく個の発想と技術に焦点を当てていることに気がつくコーチは少ない。 Jリーグ10,000ゴールはセゾン出身の選手だということを記憶している方も少ないだろう。ちなみに野洲対守山北が行われた ビックレイク(人工芝2天然芝1面新たに2面造成中)には、滋賀県の交通の便の悪い田舎で行われた試合にもかかわらず野洲の 選手を見に数チームのJスカウトのブレザー姿があった。 ビックレイクのこけら落としということで、準々決勝としては珍しく同会場で4試合という方法だった。小さなスタンド中央に席 を取ると、ヴィヴァイオが来ているという情報を聞きつけた滋賀県協会のスタッフ数名が挨拶に来て下さった。「あれ。渡辺さん どうしたんですか?」「ご無沙汰しています。」と握手を交わし、「野洲高校のサッカーを勉強に来ました。」「えっ。千葉から 試合だけ見に来たんですか?」「そうです。セゾンと野洲のサッカーを勉強に来ました。」その言葉の裏には、敵が多いだろう岩 谷さんは千葉からわざわざ見に来るほど学ぶ価値がある方と私達は考えていて、そのような人が地元滋賀にいるんですよという意 味を込めての言葉だった。9:30分キックオフの1試合目、草津東の試合を観戦するも、帰りの運転と2試合目に集中するため 試合途中から休憩。ハーフタイムから2試合目のアップが隣の人工芝グランドではじまったこともあり、移動してビデオを撮って いると岩谷さんが現れた。「ほんまに来たんかい。」から会話ははじまった。「日本の高校のサッカーを…。」普段踏み込まない だろう言葉を岩谷さんの口から聞くことができた。 11:10分キックオフで試合が始まった。野洲は3−5−2のシステムで小柄なGKだった。開始早々コーナーから失点をする。 「まずいなぁー。2点目を取られなければよいが。」負けたら終わりの選手権予選であるため、次の失点は勝敗を大きく左右する 。前がかりでくる守山北に対して時間が経つに連れ野洲がペースをつかみ出す。失点から数分が経過したところで、試合を見ていた 多くの観客が衝撃的なプレーを目の当たりにする。野洲のディフェンダーが自陣から40メートルほどのロングボールを守山北の ペナルティ付近に蹴り込んだ。誰もが野洲のFWと守山北のDFがヘディングで競り合うと思ったに違いない。私自身もそのような プレーを予測した。次の瞬間野洲のFWは高く飛んで胸トラップで相手の前に出て左足のボレーで同点ゴールを決めた。「中村。 今の予想できたか?」「いいえ。」全く予想できないプレーは国体の3位決定戦と同じだった。1人2人だけではない仕掛ける ドリブルというものを試合中多くの場面で選手たちに見せることができた。同点になってしまってからは一方的な展開となる。 前に蹴り込む守山北と自由な発想でプレーを楽しんでいる野洲には大きすぎるほどの差があった。技術の高い野洲に対して、 ベンチからは「取りに行くな」と指示が出る。『取りに行こうが行かなかろうが最終的にはどう対応したらよいのだろうか?』 プレーしている守山北の選手たちは多分同点に追いつかれてから60分以上もそのような気持ちでプレーしていたに違いない。 あまりにも個人技術と選択肢の多さに差があり選手は明らかにパニクッていた。 後半途中2対1でリードしている場面で、同点ゴールを決めた長身のFWとゲームをつくっていた10番が負傷退場する。 チームとしては核になる選手2人が交代しても、選手たちが動揺している様子のないことに本当に本当に驚いた。カウンターを 狙ってくる守山北に対して、1点差は決してセイフティーリードではない。しかし、ベンチは中心選手をいとも簡単に下げてしまった。 交代で入ってきた身体の小さい選手が全く緊張している様子がない。本当にサッカーを楽しんでいる。これまで高校サッカーを 何試合も見てきている私が目にしたことのない光景だった。更に1点を追加し、3−1で野洲が勝った。2試合目が終わり、 3試合目が始まるころにはスタンドがガラガラになった。出口付近でJのスカウトをしている大学の先輩にお会いし「何でこんな 所にいるの?」と聞かれ、「子供たちを連れて試合を見に来ました。」と答えた。「えっ。わざわざ千葉から見るだけに?」 「はい。」当時神様だった先輩に対して「○○さんこそ私達より遠方からじゃないですか」と切り返し、丁寧に挨拶をさせて いただき失礼をした。バスに乗り込む選手たちに「どうだった?」と声をかける。「本当に面白かったです。」という答えが多くの 選手から帰ってきた。 準決勝を延長で、決勝を1−0で勝ち上がった野洲高校がいよいよ冬の選手権大会で関東にやってくる。多くの子供たちや指導者達 に全く新しい発想のサッカーをぜひ見せてほしい。守備面に不安を抱えているようで、スピードでやられてしまうこともあるだろう。 しかし、見ている観客が想定していない「えっ。」というようなプレーをワンプレーでも多く見せてあげてほしい。31日行われる 1回戦を見学したかったが、12月23日から、出発予定の岡山・下関・北九州・長崎国見の招待大会の最終日が30日のため、 安全を考えると千葉への到着は31日の夕方になりそうでかないそうにない。初戦は私共の大会にも参加いただいていて大変お世話 になっている修徳高校に決まってしまったのが残念だが、両チームとも良い試合になるよう願っている。 ジュニアユース千葉茨城リーグの新人戦中だが、本当に蹴り込むチームが多い。蹴り込むことを悪いと言っているわけではない。 ベンチも保護者も一喜一憂する気持ちも分かる。指導者が現時点での結果を求める気持ちも分かるが、今技術や判断を大切にしな ければ勝負をかけているユース年代のどのチームがそのようなことを大切に指導してくれるのか?残念ながら結果の出ていない チームにほんの数チームあるだけだ。ジュニアユース年代でクラブチームに所属し、蹴り込んで戦っている選手や保護者が個を 大切にする結果の出ていないチームに進路を求めることは少ないだろう。更に輪をかけた環境の有名校・有力校に身を置くのである。 更に戦える人間になるかもしれないが、小さなエリアの千葉県だけを見ても、これまでの14年間何人のフィジカルの高い選手が プロになったり大学で活躍したりしているのだろうか。高い技術と良い判断を求めるべきジュニア・ジュニアユース年代の役割は 大きい。小さい頃身につけるのに時間のかからないことが大きくなるとどれくらい莫大な時間を要するのかユース年代のサッカーを 何試合も見て検証する必要がありはしないか。 私達ヴィヴァイオは全然だ。何もないと言ってよい程度だ。他のチームや高校年代についてとやかく言う資格も何もないことは重々 自己理解している。しかし、現高校3年生はJリーグができた時に3〜4歳だったに違いない。私達が子供の頃、ダイヤモンドサッカーが 12チャンネルで週1回あった時代から、Jリーグができ、世界のサッカーがテレビで毎日のように見られる時代に育ってきた年代である。 ジュニア・ジュニアユースの指導者の集大成が正月の高校サッカーで繰り広げられる。何万人というサッカー人口の中の各地域を 勝ち抜いてきた選手たちが、冬の選手権でどのようなパフォーマンスを披露してくれるのか?チームではなく、個々を見て検証する 時代にもうそろそろ日本もなるべきだ。 クラブとの融合が見られる高円宮杯でも「絶句したり」「ワクワクしたり」するような選手は 本当に少ない。勝負のために蹴り込む時代をはやく脱しなければ、世界のトップテンすら何年経っても達成できようはずがない。 ジュニア・ジュニアユース年代の指導者の責任は本当に重い。

                                              (渡辺)