初回の通信の題にしては不適切に受け取られるだろうか?野洲高校が選手権で全国優勝を果たした。
今大会前の岡山県で行われた国体を見れば関係者の多くが野洲高校に注目してしかるべきだと思っていた。
選手権に関する情報誌や31日に等々力競技場で配布された選手権の資料にも野洲の「野」の字も選手の名前す
らも挙がっていなかった。1月9日の決勝戦を観戦に向かうヴィヴァイオバスの中で、運転手の私と補助席
に座った鈴木コーチとの会話は以下の通りだ。「マサコーチ!大会優秀選手に野洲は何人選ばれると思う?」
「何人ですかねぇ〜。」「19番やディフェンスの5番を入れるかなぁ?」「頭かたいから入れないん
じゃないんですか?」「俺もそう思うけど。今日、バカさ加減が露呈するな。少なかったら笑うぞ。」
だいたいの内容はこんな感じだったように記憶している。
「指導者を目指しているんなら野洲のサッカーを参考にしない方が良い。」あるユースチームのコーチの言葉だ。
「滋賀県まで野洲を見に行ったの?何で?ボランチの連動・ディフェンスの…。」ある高校の関係者の言葉だ。
「野洲のサッカーは面白かった。でももう少しディフェンスが改善されたら…。」トレセンに携わる指導者の言葉だ。
野洲が全国優勝をしたことを評価して意見を言いたいのではない。プロの試合を含め、お金を出しても見たいと
思うサッカーの試合が日本には多くあるのだろうか?今回どれだけサッカーに携わっていない人間に対してサッカー
というスポーツの面白さを伝えてくれたことか。
だいたい戦術から話をし出す。「もう少しこうしたら良いのに。」サッカーに携わっていたり、小さいながらも
ちょっとしたプライドを持っていたりする人間ほど野洲のサッカーについて批評がはじまる。「なぜ素直に学ぶ
姿勢を持てないのか。」本当に不思議だ。初戦の修徳高校戦後に岩谷さんに電話を入れた。風邪ひきが多く選手の
健康面で不安があったとの話。怪我を抱え試合に出場している選手も勿論いる。準々決勝の大阪朝鮮戦では、
後半に失点をくらった後、キックオフ後自陣でショートパスの連続がはじまる。残り時間を考えると前に蹴り込む
パワープレーを選択するチームがほとんどといって良いはずなのに、野洲は前に攻めなかった。もう一度自分た
ちのパスでリズムを作り直し攻撃に転じて同点に追いつく。目指しているベストな試合は準決勝の多々良学園戦の
1試合のみだったと岩谷さん。試合を重ねるごとにマスコミの影響でFWの青木がクローズアップされ、
パスサッカーが信条のはずが、多々良戦では出てくるはずのパスが出ずにチーム内に不協和音が出ていると
スタンドから感じるプレーが見られた。前半途中で交代した選手はベンチの山本監督に対して怒鳴ってロッカー
ルームへ消えていった。私と鈴木は2人合わせて全ての野洲の試合を勉強させてもらった。決勝の鹿児島実業戦。
発想豊かなプレーにスタンドもどよめくが、九州男児の鹿実に対して局面局面で負けないディフェンスがあった。
いろいろな考え方があるのは当然だ。あれだけのプレーをするには我慢がいることを分かっているのだろうか。
型にはめ、戦術重視で勝利至上主義になっているユース年代の行き詰まりは極まっている。多くの指導者が気が
ついているのに変えることができない。その事を受け止めずして、野洲のサッカーを語るのは如何なものか。
今大会だけではないだろう。山本監督は多くの場面で立っていた。自由な発想のサッカーにはリスクが大きい。
パスミス。ドリブルミス。受け渡しミス。誰もがシュートと思う場面でのパス。今までの常識であるリスクを
少なくという発想を持った指導者にはあのような選手たちのサッカーを生むことはできない。でも大半がその
様な指導者なのだと思う。今までの通信でも奈良高田の中瀬古先生の言葉を紹介してきた。「世界に通用する
選手が出るんかい。」この年代から観客を魅了する野洲のような選手が山ほど出てくる中で、世界に通用する
選手が出てくると感じたのは私や佐々木や鈴木だけだろうか?
決勝戦終了後、大会優秀選手の発表があった。「マサコーチ!どうかなぁ〜。」電光掲示板には優勝した野洲高校5名。
準優勝の鹿実8名の名前が挙がった。「やっぱり。駄目だ。」最も見やすいブースで胸からカードを提げた指導者が
集まって決めた結果に言葉も出なかった。大会優秀選手ではなく、ヨーロッパで戦うための選手たちと名前を変えて
発表してくれたらまだ納得がいく。ヨーロッパに連れて行くことができなくても最低でも7名くらいの選手を選出
するべきではないか?これまでの指導者側の型のサッカーに当てはまらない野洲の選手たちをこれまでの指導者が
評価できないことも予想はしていたが露呈してしまった。あのようなサッカーが全国を制することはそうそう無い
だろう。その場面を見ることができたことに感謝し、ジュニア・ジュニアユース年代で型にはめ勝利至上主義に
走っている指導者にも変化を期待したい。
昨今お金で選手を集めてくる時代になってきている。県外の私立では中高6年間特待生というのが流行らしい。
県内の私立高校でも付属大学にしか推薦書を書かなないと選手に圧力をかけているチームがあるらしい。国見の
懇親会である九州のクラブチームから千葉県内の私立に来ている選手の困惑を相談された。夏に行ったセレクション
でいったん返事をして他の高校に決めた選手の保護者に対して訴訟を起こすと脅したコーチも出ている。金儲けや
レギュラー以外を資金を集めるために子飼いにしているから初戦で負けたりするのだ。「サッカー王国千葉」と
馬鹿げたことを言っている県内のサッカー関係者も多い。「一部無法地帯千葉」と名前を変えた方が良い。
岡山国体の決勝よりも3位決定戦の方が遙かに釘付けになった。千葉県もいつかリセットできるのだろうか?
なかなか難しいものである。ジュニアユース年代でも名前を変えるチームが増えてきた。若いコーチから報告が入る。
○○チームが△△と提携して名前が変わるそうです。「だからどうした。いくらでも名前を変えたら良い。
ベースは何も変わらないだろう。」と話をする。どんなにホームページで良い言葉を並べ選手や保護者を集めたとしても、
夢を持って集まってきた人たちはそのギャップを感じることになる。今までお願いしていなかったが、
Jのチームにもお願いがある。日本のサッカーを牽引するにあたり、カテゴリーカテゴリーの勝敗を求めるのではなく、
セレクションで選んだ選手たちが次のカテゴリーで活躍できる選手の育成にも力を注いで欲しい。セレクションで
選んだ選手たちが一人でも多くプロになれるように最大限に力を発揮して欲しい。U−15で結果を求めすぎると
思わぬ弊害が選手たちに待っている。
決勝が終わって4時間後、ベンチの山本監督の隣に座っていた岩谷さんに電話を入れた。「おめでとうございます。
完結しましたね。」「いゃー。ありがとね。滋賀まで見に来てくれたんだもんなぁー。」「今日はお疲れだと思うんで
また連絡します。落ち着いたら以前からお願いしていたように野洲にもセゾンにも勉強に行きますから。その時は宜しく。」
「ありがと。」短い言葉だったが精一杯感謝の気持ちを込めた。サッカーって楽しいものなんだと多くの人に気づかせて
くれた山本監督・選手・スタッフに感謝したい。それとともに、18歳で人生の最高を迎えないよう、今後の活躍を期待したい。
私たちも微力ながら行き詰まりから脱却できるよう努力したい。
最後に一言だけ。どんなに戦術を駆使して、戦う選手を育ててもお金を払ってその様なチームを観たいと思う気持ちはない。
大学選手権の決勝戦が深夜テレビで放送されていた。あまりの発想の乏しさと蹴り込む試合に怒りを覚えた。
野洲のサッカーが全てではない。当然のことだがいろいろなサッカーがあって良いのだ。しかしそのベースとして個人の技術
・豊かなイマジネーション・良い判断を求めたい。速い選手・今、力のある選手を集めて結果を求めている多くの
チームがこの良い機会を逸しないことを願っている。
(渡辺)
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